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アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは

脳に特殊なタンパク質であるアミロイドβがたまってしまうことで神経細胞が破壊される進行性の疾患です。
大脳の側頭葉にある海馬の萎縮が起こり、認知機能が低下して物忘れの症状を起こします。
進行するに従って物忘れの症状が悪化し、以前はできていたことが徐々にできなくなって、昔のことは簡単に思い出せても、最近のことを覚えられなくなります。
さらに進行すると、物を盗まれたと思い込む、徘徊、抑うつ、焦燥など様々な症状も現れはじめます。

アルツハイマー
型認知症の症状

認知機能障害

認知機能は、思考、理解、判断など、脳で行われる知的な機能の総称です。認知機能障害は、こうした機能が働かなくなってしまっている状態です。
アルツハイマー型認知症では、昔の記憶こそ鮮明ですが、新しいことを記憶できなくなります。同じことを何度も繰り返し質問する、食事をしたことを忘れるなどは、一般的にもよく知られた症状です。進行すると、年月日や今いる場所、家族の顔などもわからなくなり、通い慣れた場所で迷う、買い物の際の計算ができなくなる、得意料理の味付けに失敗するなどを起こすこともあります。

BPSD(行動・心理症状)

BPSDは、認知症に伴う行動・心理症状です。焦燥・興奮、異常行動、妄想、幻覚、抑うつ、不安、多幸感、無気力・無関心などがあります。

身体面の症状

アルツハイマー型認知症は進行性の疾患であり、脳の萎縮が徐々に周囲へ広がっていき、運動神経の中枢が最後に障害されます。こうしたことから、身体症状が起こるのは、かなり進行してからになります。

アルツハイマー
型認知症の原因

脳の細胞外に特殊なタンパク質であるアミロイドβがたまると細胞内のτタンパクという異常なタンパク質が変性し、それによって神経細胞機能の阻害と破壊が起こって脳が萎縮し、アルツハイマー型認知症を発症します。記憶に関係した海馬から萎縮がはじまり、進行に従って萎縮が脳全体に及んでいきます。若い方が発症した場合には海馬ではなく、頭頂葉内側部などから破壊が進むこともあります。
初期には物忘れの症状が現れ、次第に新しいことを覚えられなくなります。進行すると、年月日や今いる場所がわからなくなり、判断力や理解力が低下していきます。年単位の長い時間をかけてゆっくりと症状が進行します。

アルツハイマー
型認知症は遺伝する?

家族性アルツハイマー病は、アルツハイマー型認知症全体の10%程度を占めているとされており、アルツハイマー型認知症の発症に遺伝が関与することはわかっています。家族性アルツハイマー病を含む家族性認知症は、いくつかの遺伝子異常によって起こっていることが報告されています。また、若い年代に生じる認知症の中にも家族性が存在すると指摘されています。
当院では、健康な方が将来的な認知症発症のリスクを確かめるApoE遺伝子検査やMCIスクリーニングなどの自費検査も可能です。

アルツハイマー
型認知症の治療

アルツハイマー型認知症には、根本的な治療法はまだありません。そこで、進行を遅らせる目的の薬物療法を中心に、症状や状態に合わせたリハビリテーションを行っていきます。

薬物療法

脳内の神経伝達物質のバランスを調整する薬を使った治療により、認知機能低下の進行を遅くする効果が期待できます。

コリンエステラーゼ阻害薬

アルツハイマー型認知症では、神経伝達物質であるアセチルコリンが少なくなっています。コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンを分解してしまうアセチルコリンエステラーゼの働きを妨げることでアセチルコリンが分解されないようにする薬です。アセチルコリンの量を増やすことで、症状進行抑制の効果が期待でき、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に使われています。ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンがあり、ドネペジルには貼付薬もあります。

NMDA受容体拮抗薬

アルツハイマー型認知症では、神経伝達物質のグルタミン酸が過剰になって大量のカルシウムイオンが流れ込み、神経細胞を壊してしまっていると考えられています。NMDA受容体拮抗薬は、カルシウムイオンの流入をブロックする薬です。これによって脳内の情報伝達が整って進行予防につながることが期待できます。メマンチンなどの薬が使われています。

適度な運動

適度な運動を習慣的に行うことで脳への血流も改善し、認知機能の維持に役立ちます。また、運動を続けることで心血管疾患の発症リスクを下げる効果も期待できます。

バランスの良い食事

抗酸化作用のある食品やオメガ-3脂肪酸を含む食品は、老化を抑制し、脳の健康維持にも役立ちます。また、イチョウ葉エキスも効果が期待できるとされています。

十分な睡眠

質の良い睡眠は脳の良好な状態の維持に欠かせません。また、記憶力や認知機能にもプラスの影響を与えます。なお、睡眠不足はアルツハイマー型認知症発症と相関があると指摘されています。

社会的なつながり

社会的なつながりを持つことは、気持ちのハリ、責任感、楽しみなどにつながります。友人や家族、地域の人などとご自分らしい距離感で交流することは、認知機能の低下を防ぎ、気持ちの健康にも役立ちます。

脳トレーニング

ご本人が楽しく行えるのであれば、パズルや数独、言葉を使ったゲームなどの脳トレーニングは認知機能低下の抑制につながります。ただし、楽しめないのに無理に行う必要はありません。

MCI外来

レカネマブは、アミロイドβ抗体薬です。アルツハイマー型認知症は、脳に特殊なタンパク質であるアミロイドβがたまってしまうことで神経細胞が破壊されて起こる病気であり、アミロイドβを除去することで、病状の進行抑制効果が期待できます。
従来の治療薬は、神経細胞の働きを促す作用がありましたが、レカネマブはそれとは異なる作用機序を持った新薬です。レカネマブは保険適用の場合でも200mgで45,777円、500mgで114,443円となっており、2週間に1回投与する必要があります。こうしたことから、保険適用の場合でも自己負担分がかなり高額になります。レカネマブは認知症を治す薬ではなく、進行を遅くする効果が期待できる薬ということをしっかり理解することが重要です。